乳酸菌の分類

乳酸菌の安全性は高く、先進国の規制当局においても、危険性が低い微生物に分類されています。乳酸菌は種としての安全性が高く、「乳酸菌感染症」という病気は存在せず、乳酸菌は病気の起因菌として認識されていません。
日米欧の各保健当局における乳酸菌の分類を、以下に示します。

当局名 分類
欧州科学委員会(EFSA) 「特定微生物の安全性推定」(QPS)に分類されている:危険性のないことがあらかじめ分かっている微生物
米国医薬食品局(FDA) 「GRAS確認済み物質」に分類されている:使用に伴って、際立ったリスクのない微生物
厚生労働省(MHLW) 上記のような分類基準は、公表されていない

包括的なレビュー論文

乳酸菌のリスク及び安全性を検討した最も包括的な論文(622試験)(US Agency for Healthcare Research and Quality: Safety of Probiotics to Reduce Risk and Prevent or Treat Disease: Evidence Reports/Technology Assessments, No. 200)では、以下のように結論づけています(斜体は論文からの翻訳引用)。

これまでに報告された有害事象に基づき、無作為化試験 (RCT)では、対照群と比較して、プロバイオティクスの短期間使用に伴う以下の有害事象の相対リスク(RR)は、統計学的に増加していない(RR 1.00; 95% 信頼区間 [CI]: 0.93, 1.07, p=0.999):胃消化器系事象、感染症、その他の事象。重篤な有害事象も、同様である(RR 1.06; 95% CI: 0.97, 1.16; p=0.201)。
(以上より)RCTから得られているエビデンスでは、リスクの増大は示されていない。

妊娠期間及び授乳期間中、新生児における安全性

妊婦及び新生児での使用において、毒性は報告されていません(Risk and Safety of Probiotics. Clin Infect Dis. 2015 May 15; 60(Suppl 2): S129–S134)。

薬物相互作用

抗菌活性に乳酸菌を含む抗生物質との併用:乳酸菌に影響を与える抗生物質の組織濃度が高い期間は、乳酸菌が大幅に減少する可能性があります。そのため、(1) 乳酸菌に影響を与えない抗生物質(例:フラジール)を処方する、または、(2) 乳酸菌に影響を与える抗生物質(例:クロマイ)を処方する場合には、乳酸菌の予防的使用を検討する。
エストロゲン製剤との併用:エストロゲンは膣粘膜上皮の細胞の活性を高め、乳酸菌の栄養源となる糖の産生を亢進させます。そのため、乳酸菌にとっては相乗効果が期待されます。なお、乳酸菌は上皮表面に存在し、体内に移行することはありません。また、生体内活動に影響を与える物質も合成せず、エストロゲンの作用に影響を与えることはありません。

誤使用

内服製剤を間違って膣内投与した場合には、カプセルが分解されずに、そのまま膣外に排出される可能性があります。
一方、膣剤を間違って内服した場合、ソフトカプセルは胃酸で分解され、乳酸菌も胃内で死滅すると考えられます。そのため、副作用を想定されません。