どの女性用乳酸菌を使用すれば良いか?
ファーストラインで絶対に使用すべき菌株というものはありません。なぜならば、膣内、子宮内でドミナントな乳酸菌は各個人で異なり、投与する菌株の接着性、生着性を各個人で事前に予測することは困難なためです。また、乳酸菌投与後、膣内環境が変化し、それまでは非ドミナントであった固有の乳酸菌が急に元気となり、それがドミナントとなる場合もあります。現在、どの乳酸菌がそのような効果を誘発するか不明なため、複数の乳酸菌の投与が推奨されます。
原則として、内服と膣錠の併用が推奨されます。それぞれの製品に含まれている乳酸菌が異なり、生着のチャンスが高まります。また、短期から中長期間をカバーすることも可能となります。
プロトコール案
例1(乳酸菌ドミナントな環境を作りたい)
膣錠:1カプセル/日を7-10日間(生理終了直後から開始)
内服:1カプセル/日を1ヵ月
例2(再発予防)
膣錠:1カプセル/日を7-10日間
内服:1-2カプセル/日を2週間、その後、1カプセル回/日を1-3ヵ月
例3(治療)
膣錠: 1-2カプセル/日を7-10日間
内服: 2カプセル/日を2週間、その後、1カプセル/日を3ヵ月
投与期間
1コース(膣カプセル10日間、内服カプセル30日間)で、乳酸菌の回復が持続する女性と、乳酸菌の回復は一時的で、その後、乳酸菌が再び減少する女性(継続使用が必要)の2タイプに大きく分けられます。このような差が生じる根本原因は不明ですが、以下の二つの因子が考えられます。
- バイオフィルムが存在し、乳酸菌以外の菌との競合に負ける。
- 膣上皮細胞から分泌される乳酸菌の栄養源となる糖が不十分なために、乳酸菌にとって好ましい生育環境ではない。
このため、投与期間は臨床所見や検査結果を見て、適宜判断する必要があります。
参考までに、これまでに実施された乳酸菌を用いた臨床試験の投与期間のまとめを、以下に示します。これらの臨床試験ではエンドポイントを設定して、早期に有効性評価する必要があるため、投与期間は比較的短くなっています。
一方、乳酸菌の短期投与と長期投与を比較した試験では、長期投与群の方が細菌性膣炎の再発率が低下していました:Pendharkar, et al. (BMC Infectious Disease 2015 15:255)。
細菌株:L. gasseri, L. rhamnosus
投与法:膣内投与、Group I: 1 cap/day for 5+5 days, Group II: 1 cap/day for 10+10 days + 1 cap/week for 4 months)
結果:Month 6 cure rate: 50% (Group I), 67% (Group II)
重要:膣内にバイオフィルムが形成されている場合、抗生物質や女性用乳酸菌を使用しても、効果は一時的で、使用後、すぐに再発したり、乳酸菌が減少する傾向があります。それを避けるためには、バイオフィルムを除去する必要があります。
保存方法
大部分の製品は、室温保存が可能(5-25℃の範囲)ですが、冷蔵庫での保存が推奨されます。
使用説明書に記載されている乳酸菌数は、(室温保存後の)有効期限終了時点で保証される生乳酸菌数を表示したもので、製造直後には、その菌数を担保するためにその10倍以上の生乳酸菌が含まれています。冷蔵保存することで、乳酸菌の死滅速度を遅らせることができます。